初めての筆記試験


 6月12日、俺は初めての筆記試験を受験するために、東京の新宿に出かけた。
この会社は、ある運送会社の情報システムを担当している会社で、過去に内の大学から先輩が就職した経験があったので、もしかすると採用してもらえるのではないかという、淡い期待があった。
 初めての筆記試験と言うことで、前の日かなり緊張して、持っていくノートパソコンがちゃんと動いてくれるか、ワードが立ち上がってくれるかなど、かなり念入りにチェックをした。
そんな暇があったらSPIの勉強をしていた方がよかったのかもしれないが、今頃になっていくらもがいたからといって、結果がそんなに変わるものではないと思ったので、できるだけ早く寝て次の日に備えることにした。

 この日のガイドの方は、1回目の就職フォーラムの時、二日目の方を担当してくださった方だったので、かなりスムーズに打ち合わせをして目的の会社の近くまで向かうことができた。
ところが、新宿というのはあまりにもビルが多いため、どのビルがその会社の入っているビルなのか全く分からず、ビル風の吹き抜けるなか、ひたすら探していた。幸いにも俺たちは絶対に時間に遅れないようにと、1時間早めの日程で動いていたので、試験時間に遅れることはなかったが、もし日程をぎりぎりに組んでいたら大変なことになっていたと思う。
 目的のビルを見つけ、中に入ったのはいいが、その会社の或18回のフロアーまで上がるエレベーターが見つからなくて、適当に近くのやつに乗ったら、最上階の32回まで行ってしまったりした。
でも、何とか試験時間より少し早めに会社に着くことができた。
 俺はこのとき、大企業のオフィスに初めて入ったのだが、なんだかテレビドラマでいつも聞いているような音がしていたことを非常によく覚えている。
あちらこちらで電話の音はひっきりなしに鳴っていたし、パソコンをたたく音が断続して聞こえていた。そんな音を聞いていると、
「ああ、いよいよ本当に就職試験を受けに来たんだ」
と、緊張してしまった。

 筆記試験は、試験官の方が一人ついて、会社の奥の方の個室のような感じのところで行われた。
問題はフロッピーで提供して頂き、試験時間は約2時間程度で行われた。
ところが、途中で困ったことに、やはりスクリーンリーダーが文章中の下線の部分を読み上げてくれなかったので、国語の問題のほとんどを行うことが不可能だった。
このときほどスクリーンリーダーのJAWSを欲しいと思ったことはない。
これがあればちゃんと問題ができたかと思うと、かなり悔しかった。
しかも、俺は数学は点で駄目なので、国語の問題ができないことは命取りだった。
 しかし、めげていてもしょうがないので、できるところだけでも一生懸命やることにして、一つ一つ文法の問題や文書の要点をまとめる問題などを解いていった。もちろん数学の時間は、ひたすら悩み苦しんだが、ほとんどと言っていいほど、俺にはちんぷんかんぷんな問題だった。
 試験が終わって買える間際、試験官の方に
「問題は難しかったですか?」
と聞かれた。俺は正直に難しかったと答えようかと思ったが、どうもしゃくに障ったので、
「ちょっとフロッピーベースで数学の問題は難しかったですね。」
と、変な答え方をしてしまったりした。

 こんなに試験ができなかったので、帰りは気分が重かったが、もしかするとこの試験よりもパソコン操作の方を見ていてくれるかなとか、そんなことを考えて、終わったことはくよくよしないことにした。

 数日してメールが届いたが、やっぱり結果は不採用。しかも
「今回は試験結果が思わしくないため、採用を見送らせて頂くこととなりました。」
と、しっかりと書かれていた。
まあ、あれだけ試験ができなかったのだから、当然の結果である。
もしこんな結果で採用されてしまったとしたら、俺自身も納得できなかったと思う。

 この試験は結果こそ不合格だったが、最初の試験と言うことで、就職試験というのがどんなものなのか、日本の最新鋭のオフィスの雰囲気を体験できたことだけでも、新宿まで行ったことは無駄ではなかったと思っている。


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